詩集  1

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僕の回転木馬は廻らない

長い影を曳いて
回転木馬が佇んでいる
僕は時おり
僕の心にまでのびた
その影の尖を
そっと舌で舐めてみる

汐の香のする遊園地
秋の日は遠く
長い影を曳いて
回転木馬が佇んでいる

ふたたび友に

私は
私の心に
刻を打っている
重い振り子を
ぶら下げている

私は時々
はずみをつけてやるために
こいつを押してやる

再度
友にという標題をつけたのは
ほかでもない
私はいつも
孤独なのだ

風の唄

ある日、ふと気がつくと
自分が
風のようなものであったりする
また、雲のようであったりする
果てもなく流れていゆくものであり
およそ人も知らぬ遠いところで
消滅してゆくような
そんな、はかなく淋しいものに
肖ていると思えたりする



何が気をひいたのか
ポカン
と見入っている表情
あいた口の中に花粉が舞いこむ
春。
誰のことでもない
私自身のことだ
風がつむじを巻けば
目もまわる。

青眼

子供を見ていて
涙を覚えるのは
子供の
白眼のせいです
子供の白眼は
青眼だから
それが濁って
白眼になって
もう
私の白眼は
黄色眼
です

無題歌 七

交叉点
六月
事故の多い

オーイ
むし暑いぞ
と窓から顔を出して
叫ぼうと思ったが
やっぱりやめた

事故の多い
六月
交叉点

淋しいワルツ

子供は嬉しそうに
積み木で遊んでいる
遊びながらそれでも時おり
母のほうをぬすみ見る
私は終始無言で
子供の遊びの相手をしている
妻は台所にこもって
腹立たしげに仕事をしている
破調のワルツだと思った
淋しいワルツだと思った。

友よ

私は日常というやつに翻弄されている
生きるというだけの単純なことが
ずいぶん骨のおれる仕事だと知らされた
私は長い間
遠くを見つめていて
いつも遠いところを見つめようとして
ふと目を閉じた時
その瞬間の闇の中に
思い描いた遠い風景のひろがりを
見てしまった
友よ
目を閉じたときに人は
一番遠くを見据えることが出来るのだと
今頃になって知らされた
それが幸か不幸かわかりはしない
どうしたものだろう友よ
目の中の風景はあまりに遠くて
私には行きつけないことがわかってしまった

夢とか希望とか

夢とか希望とか
やくざな
若さとか
両の手のひらの間に
くるくるとまるめて
ポイと捨てるには
ちと未練が残る
かといって
夢とか希望とか
やくざな
若さとか
もうすっかり行儀よく
手のひらの上に座っていては
あとは丸めて捨てるより
しょうがないじゃないか

無題歌 八

たどりついた果ての沼のほとりで
なにということもなく
小石を投げ入れる
緑の飛沫があがり
小波がひろがる

やがて静まりかえる

また投げ入れる
波がひろがる
また投げ入れる

さびしさを重ねて
たどりついた果ての小沼に
投げ入れるもののあるうちは
まだ良い

結局のところ

結局のところ
男の方が数段ロマンチストであることは
女も認めざるを得ないだろう
なぜって
男には子宮がないのだから
いつも淋しいばかりなのだ
男の生殖をみてごらん
哀しいばかりに
孤独じゃないか
だからたまには
例の魚のように
自分の口に卵を産みつけて欲しいと
そうして
「生まれる」
実感を
自分の粘膜でたしかめてみたいと
本気で考えてみたり
するんだ

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