詩集  7

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夜汽車
 
 
灯と
音のみ
あとは闇
あとは
茫漠たる
暗思考
中枢のみの
模索
 
 
狂い泣き
 
 
狂い鳴きする
犬がいて
妙に悲しく
吠え続け
こんな寂しい
夜更けには
長い遠吠え
鳴きやまず
狂い鳴きする
犬がいて
 
 
安堵
 
 
ペンキ屋が
はけをふるうのは
彼がペンキ屋だからとだと
自分で安心してみせる
唐草模様の窓格子
したたるペンキは
赤茶色
唐草模様を
ぐりぐりと
素人目にはゆうちょうに
小さなハケで
ぬりたくる
少しも進まぬ仕事でも
明日には
仕上がることだろと
人ごとながら安堵して
芸術家きどりのペンキ屋も
所詮ペンキ屋と
自分で安心してみせる
 
 
No.21
 
 
ばかばかしいことだが
軽重とりまぜて
いろんな心の傷があり
その傷をなめて
生きている
 
 

 
 
ピエロ
三色(みいろ)の化粧のうちで
白い化粧が
一番おちぬ
道化の素顔が
よく見えぬ
舞台のひけた
その後も
白い化粧が笑い顔
何時のまにやら
この白い粉(こ)が
己の心に化粧して
泣いても人には
笑い顔
何時のまにやら
涙が出ても
少しも
化粧はくずれずに
何時のまにやら
この白い粉(こ)が
ピエロの心も
白くする
 
 

 

美しい少女を見ました
 

曇天
 
 
寝っころがっている
一塊の
黒い

 
 
No.15
 
 
言葉をまさぐれば
言葉たち
快感の声を上げて霧散
またじっと静けさを耐える
よし沈黙からすべてが生まれるにしても
この静けさは
重すぎる
 
 
かろやかに
 
 
軽やかに
花粉が飛んでいたり
する
 
 
なくがよい
 
 
泣くがよい
これは西からの風である
遠く
北の国へと届けよう
鳥がゆく
花粉がゆく
すべてよろこばしいものにのせ
遠く祖国へと届けよう
泣くがよい
 
 
No.19
 
 
まごころに似せてつくられた言葉
値打ちを失った たとえば
愛という言葉
 
だがまたしても
まごころを伝えるために吐く
その言葉
 
 
五月
 
 
緑は
いよいよ緑色に
春という名の
すべての優しいものを
喰いつぶしていく
蚕食に似た
これは
初夏というより
純情の終焉だ
 
 
中也風に
 
 
今年の梅雨は
明けました
まるで梅雨のようで
ありました
昨日の僕は悲しくて
想い出の中で
笑いました
かげろうの羽をとるように
軽いタッチで
泣きました
子供の頃の遊びのような
面白いよな悲しよな
そんな
昨日でありました
 
 
郷愁
 
 
何もない
ありすぎて
何もない
 
 
No.3
 
 
胸の焦がれと
頬の熱とを
風にまかせ
風にまかせ
それが私の春でもあった
 
 
蜘蛛
 
 
くもの心は
水色
くもは泣かない
くもは怒らない
くもは笑わない
くもは
知らない
 
 
人群れ
 
 
人群れは
無表情な
足の群れ
 
 
ある日ふと
 
 
恋をするかもしれない
ある日ふっと
そして俺は
もっともらしい顔をして
人生論などひとくさり

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